1991年02月01日

経済の動き

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<米国経済>

米国経済は一段とリセッション入りしたとの公算が強まっている。'90年7-9月期の実質GNP(確報値)は暫定値の1.7%から1.4%へ下方修正された。

生産関係の指標を見ると、11月の鉱工業生産は前月比▲1.7%と9月から3ヵ月連続して減少となった。自動車部門が▲21.5%と大幅に減少(10月▲5.1%)したのが主因。自動車部門を除いたベースでも▲1.1%減だった。生産の減少を受けて、設備稼動率も10月の82.4%から11月は80.9%へと低下した。

家計部門をみると個人消費、住宅投資とも低迷している。コンファレンス・ボード発表の12月の消費者信頼度指数は61.3と既に前回のリセッション時の水準にまで低下している。11月の実質個人消費は前月比▲0.2%と2ヵ月連続しての減少。内訳をみると耐久財が▲1.7%減と落ち込み、それまで比較的堅調に推移してきたサービス支出も▲O.1%とマイナスの伸びとなった。また、11月の新設住宅着工件数は2戸建て以上の集合住宅を中心に増加し、前月比9.3%の伸びとなった。しかし、これは一時的な現象とみられ、前年同月比では▲16.2%と依然として大幅な減少を続けており、先行指標となる許可件数をみても前月比▲1.4%減の90.4万戸にとどまっている。

物価動向については、12月の生産者物価はエネルギー価格の下落を主因に、前年同月比で5.6%の上昇にとどまり、前月比では0.8%と11月の0.5%伸びから下落に転じた。

FRB(米連邦準備制度理事会)は、こうした景気の悪化、インフレ率の鈍化を受けて、12月19日公定歩合をそれまでの7.0%から0.5%引き下げて6.5%とし、また1月8日にFFレートの目標水準を0.25%引き下げて6.75%とした。依然として湾岸情勢の先行きが不透明ではあるものの、今後さらなる景気の悪化を示す指標が相次げば、一段の金融緩和の公算が強い。



<日本経済>

○景気は引き続き堅調

日本経済は今のところ堅調に推移している。ただし景気の先行きに関しては、昨年10月の景気動向指数(先行指数)が40.0で、2ヵ月連続50を下回ったととに象徴されるように、やや減速感が出ている。なお、11月の生産指数は、前月比では0.3%の下降(前年比では6.6%の上昇)となっているが、12月、今年1月の生産予測指数はそれぞれ若干の上昇を示しており、足元の生産は引き続き拡大基調にあるといってよい。

個人消費関連の指標を見ると、昨年11月の大型小売店販売額は前年比6.6%増と比較的堅調さを維持している。ただ、同月の新車登録台数(軽自動車含む)は前年比0.9%増にとどまり、頭打ち感が出始めている。

設備投資関連指標では、先行指標としての機械受注(船舶・電力を除く民需)が昨年9月前月比6.2%と増加した後、10月は7.6%減となった。ただし前年比で見れば、10月は4.7%増加であり、また、建設工事受注高(非住宅)も11月は前年比20.7%の増加となっていることから、設備投資は当面堅調を維持しよう。

住宅関連の指標をみると、住宅着工件数は金利上昇などの影響で、前年比の伸び率は低下基調を辿り、11月は3.7%の減少に転じた。住宅着工件数は今後も減少傾向で推移しよう。

住宅関連の指標をみると、住宅着工件数は金利上昇などの影響で、前年比の伸び率は低下基調を辿り、12月は2ヵ月連続マイナスで1.4%の減少に。住宅着工件数は今後も減少傾向で推移しよう。

○引き締まった労働需給

労働需給は引き続き逼迫している。昨年11月の有効求人倍率(季調済)は1.41倍であり、依然として高倍率のまま推移している。

労働市場のタイト化を映じて、名目賃金指数(全産業、ボーナス等込み)も前年比で10月は4.7%、11月は4.4%とそれぞれ上昇している。消費にとっては好環境である反面、物価面への影響が懸念されるところである。

○消費者物価前年比4%の上昇に

昨年11月の輸入物価は、依然入着原油の高値推移の影響などで、前月比では1.0%の上昇にとどまったものの、前年同月比では、10.5%の上昇となった。国内でも石油製品や化学製品への価格転稼が続いたことが主因で、国内卸売物価は前月比0.3%の上昇(同2.2%上昇)となった。

○消費者物価前年比4%近辺の上昇率

11月の消費者物価(全国総合指数)は前月比で0.4%下落した。ただし、前年同月比では4.2%上昇であり、これは'81年12月(4.3%上昇)以来約9年ぶりの高い上昇率となっている。

○通関出超幅は前年比で増加

昨年11月の通関統計は、出超幅が約23億ドルとなり、前年同月比35.6%の縮小となった。輸入が原油価格が高騰などで、前年比26.2%の増加となったことが影響した。11月の輸入原油の単価は、1バレル34.1ドルに達している。



<イギリス経済>

イギリス経済は企業部門を中心に景気悪化が続いており、'90年12月IC:は公式にリセッション入りが宣言された。'90年のGDP成長率は1-3月期の前年同期比1.7%から、4-6月期には同2.3%とやや回復したが、7-9月期は同0.6%と再び低下しており、'90年の成長率は1%程度に止まる見通しである。

今回のリセッションは特に企業部門に深刻な影響を与えており、'90年の企業倒産件数は過去10年間で最多となる見通しである。

小売物価(消費者物価に相当)上昇率でみたインフレ率は、中東情勢不安による原油価格上昇の影響から8月以来、前年同月比で2桁上昇が続いていた。しかし、その後の原油価格の低下と、モーゲージ金利の引き下げ(イギリスの小売物価にはモーゲージ金利支払いが構成項目として含まれている)等からピーク・アウトし、11月は前年同月比9.7%となった。

貿易収支は、主に内需の鈍化に伴う輸入の減少から改善傾向にある。11月の貿易赤字は9.7億ポンドと7-9月期の12.6億ポンドを大幅に下回った。



<ドイツ経済>

旧西独地域では景気は依然好調に推移している。'90年7-9月期のGNP成長率は、前年同期比5.5%増と急伸した。項目別の前年同期比寄与度では、個人消費が2.3%、設備投資が1.3%となっており、ドイツ統一の影響をうけ内需中心に好景気が続いている。連邦統計局の発表によると'90年のGNP成長率は4.6%と'89年(3.9%、改定値)を大きく上回った。

生産面をみると、鉱工業生産は7-9月期に前年同期比5.7%、10月も前年同月比5.2%と高水準の伸びを続けている。製造業設備稼働率も9月末時点で89.9%と、前回6月末の89.4%を上回っている。

物価については、生計費(消費者物価に相当)の前年同期比上昇率でみたインフレ率は、中東不安による原油価格の高騰から、8月以降悪化傾向を辿り10月には3.3%のピークに達したが、原油価格の低下に伴い落ち着きを取り戻しつつある(12月2.7%)。しかし、景気過熱によるインフレ懸念は依然根強く残っている。

貿易面では、(1)旧東独における(西側製品への)需要の拡大、(2)旧西独の貿易相手国における景気の鈍化―等を主因として通関統計ベースでみた貿易黒字は減少傾向にある。

一方、旧東独地域では経済の悪化が加速している。'90年上半期のGNP成長率は前年同期比▲7.3%、また鉱工業生産は4-6月期の前年同期比▲9.5%から7-9月期には同▲48.1%へと大幅に落ち込んだ。これは東独製品に対する需要の低迷、労働者の減少等によるものである。

失業者数は、通貨統合前の6月末の14万人から急増し、11月には59万人に達した。これに操短労働者177万人を加えると旧東独労働者の約3分の1が実質的な失業状態にあることになる。



<カナダ経済>

カナダ経済は減速傾向となっている。'90年7-9月期の実質GDPが前期比年率▲1.0%の低下を示し、4-6月期(同▲1.2%低下)に続き2四半期連続のマイナス成長となった。カナダ経済はリセッション入りしていることが確認されたと言えよう。

物価動向をみると、消費者物価は11月原油価格上昇の影響により、前月比0.6%の上昇、前年同月比5.0%の上昇となった。コア・インフレ率は前月比0.4%の上昇、前年同月比4.2%の上昇となっている。基調としてはやや落ち着いてはいるものの、依然、賃金上昇率は高水準で推移しており、物価上昇圧力は根強い。

貿易収支については、9月14.8億加ドルの黒字と8月の6.8億加ドルから黒字幅は拡大した。9月、輸入の伸びが国内景気の低迷から前月比3.4%減少した一方、輸出が同3.6%増加したことによる。

'91年1月より財・サービス税(大型間接税の一種、7%)の導入による物価上昇圧力の高まりにも警戒をする必要がある等から、当面、本格的は金融緩和は期待しがたい環境と見られる。金融当局は景気動向を勘案しながら、金利の小幅、段階的な引き下げを目指すものの、基本的には高金利政策を続けよう。このため、景気は減速傾向を持続しよう。



<オーストラリア経済>

オーストラリア経済は、長期にわたる高金利政策の影響により景気鈍化が続いており、リセッションに入っている。

'90年7-9月期の実質GDP(前期比)は、内需が▲O.1%の減少となる一方、外需の成長寄与度が▲1.5%となった結果、全体では▲1.6%と2四半期連続でマイナス成長となった。内訳としては、個人消費が前期比0.3%の伸びと前期の0.6%伸びから弱まり、民間固定資本形成が同0.2%とほぼ横這いに動くとともに、民間非農業部門在庫が同▲0.8%と大幅なマイナス成長寄与度となった。

又、11月の失業率が前月の7.6% から8.2%へと引き続き上昇したこと、小売売上が似然として鈍化していること、住宅の先行き指標が低下傾向を辿っていること等をみると、景気がさらに悪化すると見られる。

一方、物価については、7-9月期の消費者物価上昇率が前期比0.7%(4-6月期間1.6%)、前年同期比6.0%(4-6月期同7.7%)の低い伸びとなった。それに伴い、11月に再審議された政府と組合連合(ACTU)の賃金協定で、以前に掲げられた7%(名目)の総合賃上げ目標が6%にまで下方修正され、同時に、'91年1月の所得税減税も決められた。今後のインフレ率は、賃金コストの圧力が鎮まる中、徐々に落ち着きをみせよう。

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