1990年05月01日

ドイツ再統一について

  細見 卓

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3月18日の東独の選挙において、社会民主党(SDP)優位という大方の予想に反して、西独のキリスト教民主同盟(CDU)とつながる保守的な政党が大勝したことは、関係者にとってショッキングなことと考えられる。なぜならSDPはドイツ再統一は不可避な方向として追求していても、所謂西独基本法23条の方式によってかなり安易に統合するのではなく、同法146条によって新憲法を採択し新しい統一ドイツに生まれ変わる方法を取り、近隣諸国の理解と同情を得てから一大行事として再統一を行うことを考えていた。また、西独で統一運動の先頭に立っていたゲンシャー外相の自由民主党の東独側も伸びず、結果として東独国民は西独並みの生活を望み、早い統一を性急に選択したことになろう。このことは、統一のスピードを早めるであろうが、関係国は不安や疑心暗鬼を強め、複雑な気持ちでいると思われ、統一への反作用が出てくる危険性もあろう。

ドイツ再統一にとって大きな問題の一つは、オーデルナイゼ線の国境の変更を言い出すのではないかというポーランドの危倶であり、それは統一後の新しいドイツが決めることだというコール首相の曖昧な態度は米ソを含め関係国の不興を呼んでいたが、西独議会が変更しないという議決をして不安は治まった。しかしながら、東独の選挙結果はドイツナショナリズムの復活が早いのではないかという推測を生み、今まで西独に散見されていた右翼勢力は無視されていたが、第二次大戦時の記憶と重なり合って不安感を呼び起こしたのは事実のようである。

EC諸国の間では、西独が東独との統一に一方的に関心を集中して、1992年のEC統合に熱意を失うのではないかと不安を持っている。コーノレ首相は口頭ではそんなことはないと言っているが、これからの推移は予断を許さないし、思わぬ破綻を招かないという保障もない。特に、ワルシャワ条約機構とNATOとの関係の中でドイツがどのような位置づけになるのかをめぐっては、統一後のドイツの力の大きさ、地政学的な位置等から様々の意見が出ており、その帰趨如何では欧州全体の混乱を招きかねないと思われる。米ソのデタントに伴い、ワルシャワ条約機構とNATOの政治同盟化が進み、現在の全欧安保協力会議(CSCE)に収赦していくことを期待したい。このような形は起こりうる混乱を抑え、欧州の安定と繁栄をもたらし世界全体にも望ましい結果を生むであろう。

西独と東独の通貨同盟がどうなるのかも関心の的だが、両国民とも賢明であり、東独にとっては1:1の交換比率が避けがたいことであろうが、1:1の交換比率によって西独にインフレが起こり、金利も上がり世界経済にも悪影響が出ると速断するのは誤りであると思う。しかしながら、東独経済の再建には4、5年かかると予想され、その間の西独の経済の舵取りは難しいことは事実であろう。日本としては、統一ドイツの経済の成功は欧州全体の発展を生むものであることから、前向きに経済協力を行って東独経済の立て直しに貢献してゆく姿勢を大切にすべきであろう。また、今までのコメコン経済の関係においてはソ連は東独に頼っている部分が大きかったが、東独の西独との統一により東独の西側化が進むため、ソ連経済のアジアに対する依存度が高まることも予想され、この面でも日本は開かれた心を持って対処してゆくべきと思われる。以上のようにドイツ再統一は政治経済両面で今後の世界に大きな影響を与える事柄であり、日本としても欧州全体の安定と繁栄に結びつく統一となるように支援をしてゆくことが肝要と思われる。

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