1990年01月01日

'90年主要国経済見通し

  石尾 勝/平岡 博之
  ドナルド・グラハム 経済調査部
  甲 寿枝

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<要旨>

  西独経済――民間・政府の建設投資と個人消費が好調に推移することによって、堅調な成長を遂げよう。

    (景気の現状)

  • 西独経済は、'86年以降個人消費を牽引力として拡大を続けてきた。'89年においても引き続き好調に推移してきているが、個人消費の寄与率は低下し、建設投資および輸出が拡大を支えている。

    ('90年の見通し)

  • '90年の西独経済は、民間・政府の建設投資と個人消費が好調に推移することによって、'89年に引き続き堅調な成長を遂げると予想される。
  • 個人消費は、(1)'90年1月に大幅な減税が行われること、(2)'90年春に大規模な労使協約の改定があり、高率の賃上げが予想されること、(3)東欧からの移民により西独の人口が増加していること、といった要因から'90年は伸び率が上昇すると思われる。
  • 貿易収支に関しては、(1)各国内需の伸びの低下、マルク高の影響から輸出の伸びが低下する一方、(2)建設投資を始めとする堅調な西独内需により輸入が引き続き増加を続けることから、黒字額の増加は僅かなものになろう。
  • 金融政策に関しては、労使協約による大幅賃上げ、1月からの減税等が物価上昇圧力を高めると予想されることから、西独連銀は引き締め政策を維持すると見られる。
  • 西独マルクについては、強い国内経済、国際的に見て比較的低いインフレ率、貿易黒字の拡大、西独連銀による金融引き締めといった要因にもかかわらず、'89年前半までは過少評価されてきたが、'90年については、(1)好調な景気拡大、(2)金融引き締め政策の維持、(3)米独金利差の一層の縮小、(4)東欧の自由化、といったことがマルクの上昇要因となろう。

  イギリス経済――'89年末からの景気減速傾向は更に強まるが、年後半にかけて回復しよう。

    (景気の現状)

  • イギリス経済は、好調な個人消費を中心に'85年以降拡大を続けてきたが、'89年に入って金融引き締めの影響により成長率が鈍化し始めている。

    ('90年の見通し)

  • '90年のイギリス経済は、当初金融引き締め政策が維持される中、(1)現在かなり高水準に達している在庫の調整が続くこと、(2)企業部門の金融収支が'89年中かなり悪化してきていること、更に(3)消費需要が伸び悩むことから、設備投資が大幅に鈍化するととが予想される。こうしたことから、'89年末からの景気の減速傾向は更に強まっていくと見られる。
  • しかし、その後は政府支出の増大や金融緩和が予想され、年後半にかけて景気は緩やかに回復に向かうと考えられる。
  • インフレに関しては、(1)成長の鈍化、(2)労働需給の緩和が進むこと、等からインフレ率は次第に低下していくと思われる。貿易収支に関しては、(1)国内景気の減速によって、輸入の増加率が低下することが予想され、また、(2)EC統合を控えEC各国の設備投資は比較的堅調に推移し、イギリスの輸出が高い伸びを続けると見られることから、僅かではあるが改善すると予想される。

  カナダ経済――米国の景気鈍化、カナダドル高による輸出の低迷に加え、金融引き締めから内需が鈍化し、景気はスローダウンを続けよう。

    (景気の現状)

  • 1989年のカナダ経済は、金融引き締めの影響により内需が鈍化傾向となり、米国の景気減速、カナダドル高から輸出も低迷し、景気のスローダウンが次第に明確になりつつある。しかも、インフレ圧力は米国に比べ根強いものがあり、金融引き締めスタンスが基本的に続いている。

    ('90年の見通し)

  • '90年のカナダ経済を見る場合のポイントは、(1)米国経済の動向、(2)金融引き締めの動向、(3)'91年1月導入予定の大型間接税の影響の3点である。
  • '90年のカナダ経済を予測すると、年前半は米国の景気鈍化、カナダドル高による輸出の低迷に加えて、金融引き締めの影響から消費・設備投資等の内需はさらに鈍化しよう。年後半は、金融緩和の効果と米国景気の緩やかな回復から、カナダの景気もやや回復するものと思われるが、そのテンポは緩慢なものとなろう。
  • インフレに関しては、(1)景気のスローダウン傾向が強まり、(2)賃金上昇もピークアウ卜すると予想されることから、ゆっくりとインフレ圧力は弱まっていこう。
  • カナダドルに関しては、(1)金利が緩やかに低下するため、米加金利差がやや縮小すること、(2)政策当局もカナダドル高の貿易面と国内産業への打撃を考慮して、大幅な上昇を許容しないこと、等からやや弱含むと思われる。

  オーストラリア経済――緊縮的な財政、金融政策の影響により成長はやや鈍化か

    (景気の現状)

  • '88/'89年度のオーストラリア経済は、内需が7.7%成長となり、GDP成長率の3.3%を大きく上回った。この結果、経常収支の赤字額は前年度の121億豪ドルから182億豪ドルへと大幅に悪化した。

    ('89/'90年度の見通し)

  • 過去数年にわたって取られてきた緊縮財政政策、賃金物価政策に加え、'88/'89年度から強化された金融政策がどの程度効果を発揮するか、総選挙の年にあたって緊縮的政策をどこまで維持できるかが、'89/'90年度の経済の行方を決める大きなファクターとなろう。
  • 住宅投資、設備投資が既に減速の兆候を見せており、'89/'90年度については、内需の増加率は低下するものと見られるが、個人消費は'89年7月に実施された個人所得税減税の影響もあり、堅調に推移すると考えられる。
  • 経常収支は、(1)内需の減速に伴い輸入の増加率が低下すること、(2)輸出に関しても一部商品価格の上昇からやや増加の方向に転じると予想されること、等があるものの、(3)主要輸出先国の成長率の鈍化もあって、貿易収支の改善はあまり期待できなく、加えて貿易外収支における利子配当収支が悪化することから、経常収支はさらに悪化しよう。
  • 為替に関しては、(1)経済のファンダメンタルズの改善がはかばかしくないこと、(2)対外純債務の拡大等から豪ドルは軟化に移る可能性が高い。

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