1989年10月01日

カネ余り経済と株価の動向

大竹 康喜

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■見出し

はじめに
1.「カネ余り」経済とは
2.「カネ余り」経済が株価に与えた影響
3.「カネ余り」経済の変化と株価の動向
おわりに

■はじめに

今は「カネ余り」の時代だと言われる。株価が高いのも「カネ余り」」ということで、説明されてきた。しかし、「カネ余り」とは何なのか、「カネ余り」が株価をどのように押し上げてきたのか、といった点についてはあまりはっきりとした説明がなされてきていないように思える。

また、現在我が国では、4月の消費税導入を契機としてインフレ懸念が高まってきている。ここ数年対前年比でマイナスの動きを続けていた卸売物価も上昇に転じており、消費者物価も4年振りに3%近い高い伸びを示している。こうしたなかで、日銀は公定歩合を9年振りに引き上げ、いままで「カネ余り」を支えてきた条件の一つである金融緩和の方向が変化しようとしている。いざなぎ景気に近い景気拡大が続く中で、企業の設備投資も拡大してきており、日銀の「資金循環表」における企業部門の資金不足は拡大してきている。

そこで、「カネ余り」が株価にどのように影響してきたのか、また、「カネ余り」経済は終焉に向かっているのか、株価はどうなるのか、等について考察してみたい。

なお、結論的に言えば、ここ数年の株高をもたらしたのは「カネ余り」によることは検証される。しかし、「カネ余り」は構造的なものではない。マーシャルのKがトレンドラインを上回ったのは1986年であり、歴史的低金利のなかで、'85年のプラザ合意以降の円高局面で貿易収支、経済収支が大幅に増加し、そのため国内的にマネーサプライが場加し「カネ余り」となった。これが、地価を上げ、企業の担保力を高め、企業の株価を上昇させ、企業を財テクへと走らせ更なる株高をもたらした。東証1部の出来高を見ても、'85年までは1日平均4億株程度であり、10億株近くとなったのは'87年以降のことである。

したがって、「カネ余り」(=株高」)はここ数年のことであると思われる。超低金利時代が終了し、対外不均衡も徐々にではあるが是正されているなど、「カネ余り」を巡る環境は変化してきている。そろそろ「カネ余り」=「株高」という認識は是正されてしかるべきであろう。
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