1989年09月01日

製品輸入増大の日本経済に及ぼす影響と輸入の持続性

大山 博史

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<要旨>

最近の急速な製品輸入の増加の背景には、我が国における消費構造の変化及び輸入構造の変化がある。このような製品輸入の増加は、国内経済へ次のような影響を与えているとみられる。

メリットとしては、(1)景気拡大のもとで製品需給逼迫による物価上昇圧力の緩和、(2)割安な輸入財の流入による購買力の向上及び消費支出拡大に寄与、(3)対外収支不均衡の是正に貢献すると共に貿易摩擦の軽減に寄与、(4)特に、アジアNIES、ASEAN諸国との水平分業の進展を図るなかで、それら諸国の経済発展に寄与することが挙げられる。

一方、デメリットとしては、(1)安価な製品輸入による企業収益の圧迫、(2)製品輸入の増加が国内製品を圧迫し、在庫調整を迫る懸念等があろう。ただ、これらについては、今のところ懸念でしかない。従って、今のところ、製品輸入の影響は、メリット面の方が大きいと言えよう。ただ、製品輸入の増加持続のためには、国内、海外両面の要因がうまく機能する必要がある。そのため、次に挙げる動向について注目する必要があろう。

国内要因としては、(1)輸入品が国内品に対して価格面以外の非価格競争面において優位に立っているか、又(2)我が国への逆輸入効果が期待できる国内企業による海外直接投資の動向が挙げられる。

また海外要因としては、(1)製品輸出国の輪出数量に影響を与えるその国の成長率や輸入国の成長率動向及び(2)国内物価や賃金動向に左右されやすい輸出物価の推移が挙げられよう。

ただ、重要なのは、我が国において引き続き内需の拡大を図り輸入拡大に努めると共に積極的な海外直接投資が今後とも必要なことである。

また、製品輸入の物価押し下げ効果は徐々には薄らいではいるものの依然内外価格差は大きいため、影響力は当面持続するものと見込まれる。従って、持続的な景気拡大を図るためにも物価安定要因となる製品輸入の拡大を行っていく必要があろう。

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