1989年08月01日

証券化とアンダーライティング - 生保に求められる金融仲介機能の拡充 -

京都大学経営管理大学院   川北 英隆

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<要旨>

金融機関は、黒字経済主体に偏在する資金を独自の金融商品(間接証券)を用いて集め、それを赤字経済主体に供給する役割、すなわち金融仲介機能を業務として行っている。金融機関は、この過程で、情報の生産と資金の性質の変換という付加価値を生み出している。金融仲介業務が付加価値を生むのは、資金の円滑な流れの確保という点で国民経済的に大きな意義を有しているからである。このような役割の上で銀行と生保の差異はない。また、間接証券をオプション(選択権)という観点に立って比較すれば、預金と保険はともに金融リスク面で流動性に関するオプションを売っていると考えられ、類似性がある。むしろ、預金も保倹の一種と考えられる。また、証券会社もアンダーライティング業務を通じて、広い意味での金融仲介機能を果たしている。

金融機関の付加価値は、A;貸出先の信用力の調査・判定、B;資金の性質の変換、C;経営ノウハウ、d;流動性に関するオプション・プレミアム(オプションの対価)に分けられる。これらの付加価値は、それぞれリスクと表裏一体であり、Aには信用リスク、Bには金利リスク、Dには流動性リスクが対応する。Cのリスクは特定しえないが、あえて言えば経営リスクである。

戦後の復興期~高度成長期にはB、Cの付加価値が安定的に(リスクが少なく)得られたので、金融機関のリスクへの意識は乏しかった。しかし、最近の自由化、国際化という金融環境の変化、および金利水準の低下は、金融機関のリスクへの意識を高めている。このようなリスクへの意識は、一つはALMや自己資本比率規制のようなリスクの管理・指標化という方向をもたらしている。

しかし、もう一つの方向であるリスクの軽減(リスク-単位当たりの付加価値の増大)がより重要な課題になろう。このような方向の表れが、先物、オプション、スワップという取引手法の発展であり、さらには証券化である。

証券化は、企業金融の証券化と資産金融の証券化に大別される。企業金融の証券化とは社債や株式の発行に代表される現象である。資産金融の証券化とは、金融機関が行ってきた金融仲介業務が、貸出資産の証券化の過程を通じて、いくつかの業務(金融仲介業務の構成要素)に分解されていく現象である。

資産金融の証券化は、このように分解された業務の構成要素を、ウエイトをも含め、自由に取捨選択する可能性を金融機関に与える。業務の構成要素を遂行するに際しては付加価値とリスクがともない、またその付加価値はそれぞれが完全に相関していない。このため、各々金融機関が置かれた立場にふさわしい業務の組合わせを求めることにより、付加価値(収益)とリスクの最適化の実現(すなわちリスクの軽減)が可能となる。つまり、業務の選択が、ポートフォリオの選択と近似するのである。また、金融仲介業務のリスクの軽減は、金融仲介コストの低廉化(つまり金利の相対的低下)をもたらし、利用者の利便に資することになる。

企業金融の証券化において証券会社に金融機関的な機能が求められているが、資産金融の証券化においても、狭義の金融仲介機能とアンダーライティング機能の曖昧化が進んでいる。証取法65条は、証券化の流れの中でその意義を失いつつあると言えよう。広い意味での金融仲介機能をすべての広義の金融仲介機関に開放することが、リスク軽減の観点からは望ましい。現実的には、まず金制調で報告された特例法子会社のような形態の金融仲介機関を、すべての業態に認めることであろう。この場合、金融仲介機能という視点からは、アンダーライティング的な機能が核になることは確かである。また、証券化の過程で導入される保証、格付は利益相反を防ぐ役割を果たす。

生保も金融機関の一員として、このような証券化とリスクの軽減を促進する流れの中に、他の金融機関と同等に位置付けられるべきである。当然、アンダーライティング的な機能が中心となるが、その他に信託、ディーリング(ブローカレッジ)、外為業務等がその補完機能として必要とされよう。

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