1988年08月01日

オーストラリアの経済構造と豪ドルの展望

  岸 道雄

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■見出し

1.はじめに
2.豪ドルの推移
3.オーストラリア経済構造とその問題
4.オーストラリアの製造業
5.今後の経済構造変化と豪ドルの展望

■はじめに

オーストラリア経済は昨年来順調に回復している。'87年歴年の実質経済成長率(GDPベース、以下同じ)は、4.4%('86年1.8%)となり、特に'87/4Qは前期比年率6.1%、'88/1Qは同7.2%という高成長を記録した。内需が堅調に推移しているうえに、輸出が大幅に伸びてきているためである。インフレ率も'86年10-12月期をピークとしてその後低下傾向を示している。

こうしたオーストラリア経済の回復に伴い、豪ドル相場も'87/4Q以降上昇に転じている。'88年6月の下旬には'85年1月以来、3年5ヵ月ぶりに1豪ドルが82米セント台を記録した。

しかし、豪ドルは過去から傾向的下落を辿っている上に、'83年12月の変動相場制移行後は'85年2月(実効レート当月末対前月末比10.5%下落)、'86年7月(同12.4%下落)に大幅に下落するなど安定性に之しい。今後為替水準が過去のようなトレンドを辿るのか、現在の水準が持続するのか非常に興味深い問題である。

'83年3月に、それまでのフレーザー自由・国民党連合政権に代わって登場したホーク首相率いる労働党政権は、持続的な雇用増加、インフレの抑制、所得、富、経済権力の再分配等を経済政策の目標とし、これに沿って国内経済の再建、対外収支不均衡の是正を実現するべく緊縮的な財政・金融政策を推進してきた。こうした政策は、労働党政権であるが故に労働組合からの協力とオーストラリア経済の先行き不安に対する国民の意識の高まりもあって次第に奏効しつつある。

しかし、従来からのオーストラリア経済の問題点は、国内的には、産業基盤が脆弱な上に伝統的に労使関係が複雑、そして高い賃上げ率とこれに影響を受けての高インフレ率であり、対外的には、恒常的な経常収支赤字とこれに伴う対外債務累積等であった。こういった問題が、構造的に改善されつつあるのか、すなわち、ホーク政権登場以前、つまり'70年代から'80年代前半と比較して現在のオーストラリア経済は果たして構造転換しつつあるのか見極める必要がある。

このことは今後の豪ドルの長期的な動向を決める最大の要因と考えられるため、以下では現在のオーストラリア経済構造とその問題について、過去との対比により検討を加え、今後の豪ドル相場の展望について述べてみたい。

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