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昭和50年にパリ郊外のランブイエで、石油ショック後の深刻な経済問題を打開するため先進国が集まり初めてサミットが開かれたが、今回のトロントサミットで14回となり参加国を二回りしたことになる。ここで、サミットの果たした役割について考えてみたい。
当初、先進国間において経済問題に対し共同で取り組むことを論議していたサミットは回を重ねるにつれ、当面する政治課題にいかに対処するかを討議することに重点を移した。このような変貌は、日本の国際外交にとって大きな効果をもたらした。
例えば、北方領土問題については日本では唯一最大の関心事とされ、第二次大戦では日本のみがソ連からひどい目にあっていると思っていたが、ドイツ、ポーランド等においては国境の人為的変更がおこなわれ、トイツ領でドイツ語を母国語としていた地域がポーランド領に編入されたままであるという悲劇もサミットを通じ日本人にも認識され始めた。
また、日ソ間緊張というとアジアだけの困難な問題ととりがちだが、実際は世界における自由主義陣営と共産主義陣営との対立の一環であるということを肌身で知ることとなった。日本の国際外交オンチぶりの有名な例として、かってINF問題が初めて話題になった時にドイツのシュミット首相が日本の考えを聞いたが、日本の首相はINFが日本に与える影響の深刻さを十分理解していなかったと伝えられている。今回のINF廃止条約締結により、欧州首脳は通常兵力の対ソ劣勢状況をどう克服するかで苦慮しているが、INF条約や引き続きの戦略核半減交渉により、潜水艦による核攻撃が抑止力の中心になった場合には四囲が海の日本は非常に困難な立場に陥るとみなければならない。このように世界の軍事外交は、中東等の散発的、局所的な戦闘ではなく、米ソの東西対立という欧州、アジア大陸を包含した大きな枠組みの中で、動いているということを、日本はサミットの会合で認識を深め自らの政治的外交役割を理解しつつあると言えよう。
サミット本来の世界経済の繁栄の持続という課題については、会合の度に護送船団論、機関車論等がでたように、相互依存性が年を追って強まり、先進国全体の繁栄を離れて個々の繁栄無し、先進国間の協調無くして個々の経済金融の安定無しというルールが確立されてきた。かってのフランスのごとく、自国本位の独自な政策をとったものの結局成功しなかったことも先進国間の相互依存性の深化を促した。このようにサミットは、首脳間の綿密な対話を通じて自国の先進国経済成長に果たすべき役割とその変化を、各国首脳が身をもって体験する機会となった。特に、日本は経済的役割一辺倒から政治的外交的にも重要な役割を果たすよう求められつつあることを、サミットの場で肌に感じて知ることができたのである。
この前のサミット、トロントサミットに対し新しい政策生まれずということで非難の声も出ているが、INF条約後の新しい東西関係の在り方が認識されたこと、また、益々強まる経済の相互依存性から簡単には新しい政策が生まれ得ず政策協調の一層の重要性が確認できたこと等から、トロントサミットは一応成功と言えると思われる。
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細見 卓
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